中型一種③実車1日目
待ちに待った実車だ。車校の駐車場から眺めていただけの中型教習車に、ついに乗れる。胸が高鳴った。
予約カードに書かれている、実車教習の1日目が今日の日付であることを確認する。時刻もヨシ。20分後に教習開始だ。フロントへ移動。
フロントのリーダーにICカードを挿入すると、はいしゃカー……配車券が発行された。教官はNさん。
教習が始まるまで5分……ミキティー的に表現するのならば「乗れない長い5分間」だ。スマートフォンのバッテリーが残り僅か4%であったが、そんなことはどうでもよかった。
やがて教習開始2分前を知らせるチャイムが鳴る。教官に呼び止められ、あいさつを交わす。そして教習車へ………。
僕がお世話になるのは日野レンジャー教習車だ。
まずは助手席に乗り込み、中型トラックを運転するときの心得を聞く。
・トラックに乗り込む際、そして降りる際はしっかり両手で持ってハンドルバーを握る。飛び降りたりしない。
・乗用車のMTに慣れていても、トラックのMTはひと味違う。つまずく人が多い。
・トラックのブレーキはエアブレーキで、強いブレーキがかかりやすい。
・ホイールベースが長く内輪差も大きい。ステアリングを早く切り過ぎないよう。
・リアオーバーハングが長く、右左折時にテールが左右に振れる。後続車や並走車に当てないよう。
など、基本的なところだ。
まずは教官が1コースを走行してみせる。右左折時にステアリングを切り始めるタイミング・位置や、クラッチワークを頭に叩き込んだ。
みたところではクラッチワークは普通だ。ダブルクラッチを使うでもない。シフトダウン時にブリッピングするでもない。半クラでシフトショックを吸収している。
ステアリングだが、前輪が運転席の真下か、やや後ろにあるために、思ったよりも前の方でステアリングを切り始める。視界の移り変わり方もトラック独特である。
発着点へ戻ってくると、ドライバーの交代。運転席へ乗り込む。ドアハンドルバーを両手でしっかり握る。2tトラックは何度か運転したことがあり、いつも乗り込みづらい降りづらいと感じていたが、この方法なら文句もあるまい。
運転席に座り、シートの位置をあわせ、高さを合わせ、ステアリングホイールの高さも調節し、サイドミラーを合わせようとするが………サイドミラーの調整ボタン類は見つからない。そういえば2tトラックを運転した時も、サイドミラーは手で動かして調整していたっけ。
教官のNさんにサイドミラーを動かしてもらった。仕事とはいえ申し訳ない。
そして、ギアを2速、3速、4速、リバースと入れる練習を何度かした。
サイドブレーキのかかっていること、ギアがニュートラルのポジションにあることを確認し、エンジン始動。いよいよ運転開始だ。
周囲の安全を確認し、サイドブレーキを下ろし、2速に入れる(そう、中型大型は2速発進が基本だ)。右合図を出し、再び周囲の安全確認。半クラッチで丁寧に発進。
半クラッチの位置がやや高かったが、概ね問題はなく発進できた。
発進する前にNさんからは「1コースを走ってもらおうと思うけど、これはダメだと思ったら今日は外周を走ってもらう」と言われていた。ダメかどうかまず………この左折で判断される。
結果はクリア。前知識として持っていた、後輪を通すというイメージを意識した。しかしこのくらい通さなくては先が思いやられるというものだ。安心してはいけない。
少し速度が上がり始めるとすぐ3速へ入れる。基本的に2速は停止時から発進のために使うそう。
そういえば、観光バスの運転の様子を車内から撮影している動画で、運転手が1速発進を使ったと言ってコメントがたくさん寄せられていたものがあった。
中型大型車で1速発進するというのはよほど珍しいことなのだろう。
直線ではすぐ4速へ。この時点で時速40kmも出ていない。そしてコーナー手前で3速に落として曲がる。
するとNさんから「基本的に4速のまま曲っていいですからね」と言われた。
そういえばNさんは車体をガタガタ言わせながら運転していた。
中型トラック特有の振動だと思っていたが、あれはそうか、普通車MTでいうエンスト前の状態なんだ。
実際、4速で減速していくとエンジンの"そういう"抵抗を感じる。ディーゼルエンジンだからこそなせる技(?)なのだろう。特にクラッチを切れとも言われないし。
外周を周り終えると、次は1コースを走る。コースとはいっても、右左折を繰り返した後に発着点へと戻る単純なものだ。
そして事件が起きた………左折時のことであった。縁石に左後輪が乗り上げた。N教官がブレーキを踏み、エンストに至る。
右左折を何度か繰り返し、案外いけるもんだなと安心してきた頃のことであったから、油断を反省した。
Nさんは「検定では、乗り上げ脱輪はバックで元の位置まで戻る。そのまま行くと検定中止だ」と。
自分の車を運転しているときの感覚で言えば、少し縁石に乗ったくらいならそのまま行ってしまいそうなものだが………ここは自動車教習所である。
検定には検定のルールがある。これはしっかり胸に刻もう。そしてなによりもまず乗り上げないよう、フィードバックが大切だ。
乗り上げた原因は、やはりステアリングを切るタイミングが早かったことらしい。中型車は思ったよりも長い。
ゆえに、前へ出ることにも抵抗が生じる。対向車線へはみ出すことへの抵抗だ。中型車に慣れるにはまだ時間がかかりそうだ。
その後はトラウマによる警戒もあり、意のままに操舵できたわけでもなかったが、乗り上げることもなく走ることができていた。
余裕も生まれて、アクセルを踏む足にも力が入った。指示速度区間への対応を見据えてである。
「やっぱ外周走りましょう」なんて言われることもなく、エンストもなく順調に走れていたおかげか、「坂道発進だけやってみましょう」!
きた!少なくとも僕は問題児ではなさそうだ!
いつもは右コーナーを進んでいたポイントを、左合図を出し、坂道区間へ進む。まるで未知の領域だ。
「白いポールにバンパーを合わせて停車して」といわれ停車。ガクッとなった。
「サイドブレーキを引いて」
僕がサイドブレーキを引くとNさんは言った。
「1速にいれて」
そう、パワーが必要な坂道発進において1速を使用するのである。
「半クラッチへ」
クラッチを徐々に上げてくると、車体を伝い振動を感じる。
「一回ちょっと下がるからね」
徐にサイドブレーキを下ろし、ブレーキペダルを踏んでいる右足をアクセルペダルに移す。
そして間髪入れずクラッチを少しあげる。同時に右足に力を込める。
すると、レンジャーは若干後退した後に、力強く飛び立った。ディーゼルエンジン の力強さを感じた。
サイドブレーキ発進のはずがいつのまにか踏み替え発進になっていたが何もつっこまれなかった笑
わざとやったのではなく、この踏み替え、クセであり無意識のうちにやってしまったものだ。
実はサイド発進があまり好きではない。次回からは気をつけたい。
そして1コースを走り終えると、
「もう時間だから最後に発着点付近へ」
と指示され、発着点付近へつけた。
停車させると、サイドブレーキを引き、ニュートラルへ入れる。そしてエンジンを切る。あと忘れかけたが車幅灯を切る。そしてシートを最後退させる。
そしてNさんから言われた一言は
「中型の場合は、教習が始まるとき外に出なくても、フロント前で待ってればいいからね」
はいはいめでたしめでたし
中型一種②入校式
いよいよ入校式である。
朝9時にはフロントに来るように言われて、早めに出たはいいが、現地でコンビニを探しているうちに着くのがギリギリになってしまった笑
フロントの人に案内されたのは3階の部屋であった。普段は学科の授業で使っているであろう教室だ。ちなみに、準中型5t→中型一種の場合は学科が1時限だけある(車校にもよるかもしれない)。
私以外には6名の方が入校式にご出席。さすが予約が取れないだけある。平日の朝だというに(火曜)。
みなさん20代から30代までの方で、私以外には大型一種、二輪、牽引、普通一種。
なかでも若い女性が牽引の教習を受けにきているというのが印象的であった。プロのドライバーなのだろうか。刺激を受け、はやく運転したい意欲が高まる。
入校式ではまずお決まりの運転適性検査(いつもの警察庁方式K-2である)から。何度か受けたが、いつも決まってせっかちだとか、気分が落ちやすいとか書かれている。今回もそうだろう。
適性検査が終わると、教科書の確認をして、配車券だとかそこらへんの出し方を聞く。私の場合は学科が1時限しかないのに、厚さ5mmはある教科書を渡された。今後この教科書を開く機会が何度あるだろうか。それは考えないことにした。
どこの車校でもだいたい教習生用のICカードをもらって、予約をして、配車券を発行する。今回の車校もそうだ。うっかり「はいしゃカード」なんて言い方のしないよう注意したい笑
そして最後に教習予約の説明を聞きに、フロントまで移動。
私の通う車校では予約の方法が2つある。
1つはインターネット予約。教習生用のIDとPWでログインし、予約フォームを開く。
2つは…フロント前のモニターから予約する。教習生用のICカードをリーダーに挿入すると、カレンダーが表示され、技能教習の空きが表示される。
今回はフロント前のモニターを使って予約のデモンストレーションだ。表示された空きコマは、中型ではなんとここ2週間で3コマしかない。周囲の目の光り方が変わったことを背中で感じる。これは戦争だ。混雑して予約が取れないことなど私以外もみなわかっているはずだと。そしてお見受けしたところ、私以外の人は社会人だ。時間を無駄にはしたくないはずである。
「それでは実際に予約をしてみてください」ー-そして眼前の「空車」は軒並みなくなっていた。それは刹那、玉響とも言える時間であった。ただし、一つを除いて。
恐らく私に配慮して空きコマを残しておいてくれたのだろう。さすがはこれから上級免許を取得しようという身分、運転の始まる前から譲り合い精神を発揮してきた。
ありがたく空きコマを享受しようと、私は薄桃色の空車ボタンに青く色を塗った。これで第一段階5時限分の予約はとりあえず取れた。
仮免許取得のための修了検定が受けられるのはいまから3〜4週間先になる。長いのか短いのかわからないが、焦らずゆっくりやっていこう。
初めての中型実車はいよいよ、翌日夕刻である。
中型一種①入校手続き〜深視力検査
次の2月で免許歴が3年になり、満21歳にもなるのでそのタイミングで大型二種合宿へ行こうと思っていたが……待てなくなり、まずさきに中型一種の教習を受けることにした。
まずは車校(教習所)探しから。(車校って名古屋の方言?標準語?)
実はこれが早速立ちはだかる壁となった。
普通免許を取れる車校は数多く存在するが…中型以上を通いで取得できる車校となると、数が限られてくる。
さらにその上、どの車校も「混雑で入校までに2〜3週間かかる」とか、「入校できても最初の予約が取れるのが1ヶ月以上先だ」とか、そういった返答ばかりで、なかなか決められずにいた(この時点で7月初旬)。
それにどの車校もなかなか遠い。軽四持ちとはいえ、片道1時間レベルの距離は悩みものだ。
7月末には中型取って夏休みにコースターで出かけよう!なんて甘い考えは容易く打ち砕かれることとなった。
そんな中、自宅から30分の位置にある車校が、中型も大型も扱っている上、「入校自体はすぐにできる」と返答してくれた!(予約が取れるのはだいたい2〜3週先だという)
入校さえしてしまえば、あとは空いてる時間をなんとか見つけて予約を取ってしまうだけだ!という甘い考えのもと、さっそく乗り込んだ。(実際はそこまで甘くなかったが笑)
フロントに入校の手続きをしたいと告げると、電話口で話していたこともあり、手続きはスムーズに進んだ。
免許証のコピーを取り、教習内容(中型一種)の確認をとり清算を済ませると(17万円也)、視力検査をするといい視力検査用のスペースに連れていかれた。
めがねで武装しているので、何の問題もなく視力検査を終えた。そして次は深視力検査である。
深視力検査とは、箱の中に横一列に3本並んだ棒があり、真ん中の棒だけ、前後方向に動く。
被検者は正面から見て、3本の棒が横一列に並んだと思った時にボタンを押す。
ボタンを3回押し、3回の平均誤差が20mm以内なら検査はクリアというものである。
大型二種をもともと取得したく、いろいろ調べているうち、準中型以上から深視力検査があることは知っていたし、ビリヤードもしているので奥行きを掴むことには不安はなかった。
さあ、やってやるぞと意気込むこと「数回」……。
ダメだ。これ全然ダメだ。
まず見ているうちに棒がぼやけてくる。奥行きを掴むどころじゃない。まず棒の正確なビジョンがつかめない。途中から変な模様がついてみえてくる。棒ってしましま模様だったっけ?めがねを外してみてみると棒は黒一色だった。
焦ってカンで押しているが当然通らない。当時は目が疲れていたということもあるが、そんなことは言い訳にならない。(ただし何度もチャレンジさせてくれた)
「ピッタリでした」そう言われてももはや喜べなくなっていた。あとの2回を大きくハズして平均誤差20mmをオーバーしたら意味がない!
そんな時に係員さん(フロントの人)から救いの手が差し伸べられた。
「棒の動くスピードが速いタイプと遅いタイプとあるんですけど、今度は遅い方でやってみましょうか?」
そんなことができるのかよ……早く言ってくれ…………もちろん即答だ。「おねがいします」
すると絶望感と陶酔感に塗れた深視力検査はすんなりとクリアした。
「仮免許の深視力検査の際も、遅い方でやってもらうようにお願いするといいですよ」
ひとまず難関突破だ。まだ入校式すら終えていないのに。
次回は入校式だ。明日行ってきます